冷蔵庫を長期間同じ場所に置いていると、重みで凹みが生じることがあります。特に、賃貸住宅で冷蔵庫下の床に凹みができると「退去時に修繕費を請求されるのでは……」と、不安になるのではないでしょうか。しかし、修繕費の負担について正しい知識を持っていれば、不当な請求を避けることができます。また、適切な対策によって、床の凹みを防ぐことも可能です。この記事では、冷蔵庫を置いた床にできる凹みに関して、賃貸住宅における修繕費の負担ルールや効果的な予防方法を詳しく解説します。入居中の方も、これから引越しを予定している方も、ぜひ参考にしてください。【目次】冷蔵庫を置いた床に凹みができる原因は?床に冷蔵庫による凹みができる原因は、大きく2つに分けられます。まずは、凹みが発生する仕組みを理解しましょう。家具や家電の重み冷蔵庫を置いた床に凹みができる最大の原因は、その重量にあります。冷蔵庫の重さは容量によって異なりますが、30kgから100kg程度が一般的です。さらに、食品や飲料などが入るため、冷蔵庫本体の重量に相当な重さが加わります。特に問題となるのは、この重量が4つの脚という限られた点で支えられていることです。冷蔵庫は一度設置すると退去時まで動かすことが少ないため、同じ箇所に長期間にわたって重さがかかり続けます。この状況が、床に凹みを作る主要因といえるでしょう。床面積に対する重量の集中度が高いほど、床材への負荷は大きくなります。そのため、特に大型冷蔵庫では、より深い凹みが生じやすくなります。床の材質床の凹みやすさは、床材の種類によって異なります。凹みができやすい床材として挙げられるのは、クッションフロアと無垢材です。クッションフロアはやわらかい材質のため衝撃には強いものの、重い物を長期間置くと跡が残る特徴があります。無垢材もやわらかい材質のため、凹みができやすいとされています。一方で、タイルやコンクリートなどの硬い材質の床では、凹みができにくい傾向があります。これらの床材は重い物を置いても変形しにくく、冷蔵庫程度の重量では目立った凹みが生じることは少ないでしょう。入居時に床材を確認し、凹みができやすい材質かどうかを把握しておけば、適切な対策を立てることができます。床の凹みの修繕費は入居者が負担する?賃貸住宅から退去する際、入居者には原状回復(※)義務があります。そのため、床の凹みが生じた場合にその修繕費を誰が負担するのかは、多くの入居者が不安を感じる部分でしょう。修繕費の負担は、その凹みが「通常の使用」によるものか、「故意・不注意」によるものかで異なります。ちなみに、床の修繕を入居者自身で行なうのは避けましょう。不適切な修繕により、かえって損害を拡大させるおそれがあるため、修繕はオーナーや管理会社に任せることをおすすめします。※原状回復:賃貸借契約が終了して賃貸住宅から退去する際に、入居者が部屋を入居時の状態に戻すこと一般的な使用による凹みや傷はオーナーや管理会社の負担賃貸住宅では、日常の一般的な使用によってできた床の凹みや傷、汚れは、オーナーや管理会社が修繕費を負担するのが基本です。このような凹みや傷、汚れは「経年劣化」や「通常損耗」に当たります。経年劣化とは、時間が経過するにつれて自然に発生する劣化のことです。例えば、畳の色あせや壁紙の汚れなどが該当します。一方で通常損耗は、通常の生活を送るうえで起きる損耗を指し、家具を置いてできた床の凹みなどが含まれます。そのため、冷蔵庫を適切な場所に設置し、通常通り使用していた場合にできた床の凹みは、通常損耗とされるのが一般的です。この判断基準については、国土交通省が公開している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」や「民間賃貸住宅に関する相談対応事例集」などの公的資料で詳しく示されています。参照:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)|国土交通省民間賃貸住宅に関する相談対応事例集(再改訂版)|国土交通省不注意による傷や故意に付けた傷は入居者の負担入居者の不注意や故意で生じた凹みや傷は、入居者が修繕費を負担しなければなりません。具体例としては、ペットによる壁のひっかき傷、床に重いものを落としてできた凹み、タバコによる汚れなどが挙げられます。冷蔵庫に関しても、適切でない場所への設置(例:畳の上への直置き)や、移動時に床を傷つけるような雑な扱いをした場合には、入居者の負担となる可能性があります。入居者が修繕費を負担する場合は、入居時に預けた敷金から差し引かれることが一般的です。修繕費が敷金を超える場合は追加で請求され、敷金のない物件の場合は退去時に別途支払いを求められることになります。ただし、経年劣化・通常損耗と故意・不注意による損傷の境界線は、曖昧な場合があります。そのため、入居者は入居前の状態を写真に残すなどして、証拠を残しておくことが重要です。修繕費をめぐるトラブルを防ぐために注意すること修繕費関連のトラブルを防ぐためには、入居時と退去時の対応が重要です。ぜひ、以下を参考にしてください。入居時に室内の状況を写真撮影する入居時には、室内の状況を細かく写真撮影しましょう。特にもともと汚れや傷がある場所は、日付入りの写真を複数の角度から撮影し、管理会社にも共有しておくことが大切です。これにより、すでにあった傷と新たな傷を退去時にはっきりと区別できます。賃貸借契約書で責任の範囲を事前に確認しておく賃貸借契約書には基本的に、原状回復に関する取り決めが詳しく記載されています。そのため、入居前にしっかりと内容を理解しておきましょう。退去時に修繕費を請求されたらオーナーや管理会社と話し合う退去時に修繕費を請求された場合には、契約書の内容や入居時の写真をもとに冷静に話し合うことをおすすめします。原状回復のガイドラインを参照しながら、合理的な解決を目指しましょう。どうしても話し合いがまとまらない場合には、消費生活センターや賃貸トラブルの専門家に相談することも選択肢の一つです。冷蔵庫による床の凹み防止には「冷蔵庫マット」がおすすめ!床の凹みを防ぐための解決策が、冷蔵庫マットの活用です。冷蔵庫の下に冷蔵庫マットを敷くことで重量を分散させられるため、床への直接的な負荷を軽減できます。冷蔵庫マットを使用するメリット冷蔵庫マットの最大のメリットは、床の凹みや傷を効果的に防ぐことです。マットが冷蔵庫の重量を面で受け止め、床への圧力を分散させることで、長期間の使用でも床材の損傷を抑えることができます。また、多くの冷蔵庫マットには防音効果も期待できます。冷蔵庫の運転時には振動音が周囲の部屋に伝わることがありますが、冷蔵庫マットがあれば振動を吸収してくれるため、騒音を軽減する効果が期待できます。さらに、冷蔵庫マットには耐震性に優れたものもあり、地震の際に冷蔵庫の揺れを抑制して転倒を防ぐ効果が期待できます。冷蔵庫マットのデメリット一方で、冷蔵庫マットにはいくつかのデメリットも存在します。まず、掃除が困難になることは、冷蔵庫マットのデメリットの一つです。冷蔵庫とマットの隙間が狭く、その間にゴミが入ったり飲み物をこぼしたりしても、掃除がしづらくなります。掃除を怠るとカビの発生につながるおそれがあるため、定期的な掃除が必要です。また、冷蔵庫付近は高温多湿なうえ、冷蔵庫の下は風通しが悪くなりやすく、マットの周辺にカビが発生することがあります。害虫も発生しやすい環境にあるため、注意が必要です。さらに、材質によっては、長期の使用で床にマットが張り付いてしまうことがあります。特にゴム系の素材は床材に張り付くリスクが高く、床材への色移りも起こりやすくなります。このような状態のものを無理に撤去すると、床材を傷める可能性があるため、張り付きにくい材質を選ぶことが重要です。おすすめの冷蔵庫マット市販の冷蔵庫マットは材質によっていくつかの種類に分けられ、それぞれ異なる特徴を持っています。適切な選択をするために、主要な材質とその特徴を理解しておきましょう。材質価格帯メリットデメリットポリカーボネート2,000円〜5,000円透明で見た目がスッキリした製品が多い、硬くて丈夫価格がやや高いゴム系1,400円〜3,000円防音・防振効果が高い、滑り止め効果もある床に張り付きやすいPVC(塩化ビニル)1,000円〜3,000円コストパフォーマンスが良い変色やひび割れの可能性がある※本料金相場はオープンデータを参考にした一般的な相場の目安であり、実際の料金は時期・条件等により異なります。賃貸住宅での使用を考えると、床への張り付きリスクが低く、撤去時に床材を傷めにくいポリカーボネート製のマットがおすすめです。ポリカーボネート製は透明なものが多いため、インテリアの雰囲気を損ねることなく使用しやすいでしょう。冷蔵庫マットを敷くタイミング冷蔵庫に中身を入れてからでは移動が困難になるため、引越しをして冷蔵庫を設置する前に冷蔵庫マットを敷くのが理想的です。引越し業者によっては、冷蔵庫マットの販売や設置サービスを提供しています。引越しの際に合わせて依頼すれば、専門業者が適切に設置してくれるため、手間を省けます。また、冷蔵庫の買い替えに合わせて、マットを交換するのもおすすめです。古いマットは劣化している可能性があり、新しい冷蔵庫のサイズに合わないこともあります。冷蔵庫の交換と同時にマットも新しくすることで、より効果が期待できるでしょう。すでに冷蔵庫を設置済みの場合でも、定期的なメンテナンスのタイミングで清掃と合わせてマットを敷くことを検討してみてください。設置の手間はかかりますが、床の保護という長期的なメリットを考えると、行なう価値は十分にあるといえるでしょう。まとめ賃貸住宅で冷蔵庫を置いた床の凹みについて、修繕費の負担ルールから凹みの予防方法まで詳しく解説してきました。床の凹みに関する修繕費は、基本的にオーナーや管理会社が負担します。ただし、故意または明らかに不適切な使用による凹みについては、入居者の負担となる場合もあるため注意しましょう。トラブルを避けるためには契約書の内容を事前に確認し、入居時の状況を写真で細かく記録しておくことをおすすめします。万が一、修繕費を請求された場合には、これらの証拠をもとに冷静に話し合うことが大切です。予防策としては、冷蔵庫マットの使用が効果的です。床の凹み防止だけでなく、防音性や防振性の向上も期待できます。材質や価格帯にさまざまな選択肢があるため、環境に適したものを選んで活用してみてください。賃貸住宅での生活では、入居中だけでなく退去時のトラブルを避けることが重要です。正しい知識を持って対策を講じれば、安心して快適な生活を送れるでしょう。v