現在は、快適な暮らし心地を提供するために、多くの賃貸住宅でエアコンが標準設備として導入されています。そのため、備え付けのエアコンが故障した際に「修理費用は誰が負担するのか?」「どこに連絡すればよいのか?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。特に初めて賃貸住宅に住む方にとって、設備の故障時の対応はわからないことだらけです。この記事では、賃貸住宅における備え付けエアコンの基本的な知識から、故障した際の費用負担の責任分担、適切な初動対応まで、入居者が知っておくべき重要なポイントを詳しく解説します。正しい知識を身につけることで、トラブルを未然に防ぎ、適切な対応ができるようになります。【目次】賃貸住宅における備え付けエアコンの基本知識賃貸住宅に設置されているエアコンには、「備え付け」と「残置物」の2種類があります。これらは、契約上の取り扱いが大きく異なるため、入居前にしっかりと確認しておきましょう。備え付けエアコンとは?残置物との違い備え付けエアコンとは、賃貸借契約上で「設備」として明記されているエアコンのことです。この場合、エアコンは賃貸住宅の付帯設備として扱われ、故障時には基本的にオーナーや管理会社が修繕責任を負うことになります。一方、残置物のエアコンとは、以前の入居者が残していったエアコンを指します。このエアコンは契約上「残置物」として扱われ、オーナーや管理会社は修理・交換の義務を負いません。つまり、壊れた場合には、入居者自身が対応しなければならないことが多いでしょう。契約書や重要事項説明書を受け取る際には、設置されているエアコンが「備え付け(設備)」なのか「残置物」なのかを必ず確認することが大切です。設備としてのエアコンは誰の所有物か備え付けエアコンの所有権は、オーナーや管理会社にあります。入居者は使用権のみを持っている形となり、エアコン本体を所有しているわけではありません。これは、備え付けの洗面台や給湯器など、その他の設備と同様の扱いです。所有権がオーナーや管理会社にあるということは、修理や交換の判断権限もオーナーや管理会社にあるということです。そのため、入居者が独断でエアコンの修理を依頼したり、勝手に新しいエアコンに交換したりすることはできません。このような行為は契約違反となる可能性もあるため、十分な注意が必要です。当然、退去時にエアコンを持ち出すこともできません。備え付けエアコンは建物の設備として扱われるため、次の入居者のためにそのまま残していく必要があります。賃貸住宅の備え付けエアコンが故障したときの入居者の初動対応備え付けエアコンに故障の疑いがある場合は、慌てずに適切な手順で対応することが重要です。エアコン故障時の初動対応をご紹介するので、押さえておきましょう。故障かどうか入居者自身がエアコンを確認するエアコンの調子が悪いと感じたら、まずは入居者自身でできるチェックを行なってみてください。エアコンの電源がつかない場合エアコンの電源がつかない場合は、まずリモコンの電池交換を行ない、正常に操作できるかを確認しましょう。電池が切れかかっていると、信号が正しく送信されずエアコンが反応しないことがあります。次に、ブレーカーが落ちていないかを確認しましょう。エアコン専用のブレーカーが落ちている場合は、一度上げ直してから動作を確認してください。エアコンの効きが悪い場合エアコンの効きが悪い場合は、フィルターの状態を確認しましょう。フィルターにホコリが詰まると、冷暖房の効率が低下したり、異音が発生したりするため、清掃を行なうことが重要です。また、排水ホースが詰まっていないか、室外機周辺にものが置かれていないかをチェックします。これらのポイントを確認しても改善しない場合は、故障の疑いがあるため、オーナーや管理会社に連絡しましょう。オーナーや管理会社に連絡する上記のチェックを行なっても改善しない場合は、速やかにオーナーや管理会社に連絡しましょう。その際は「冷風が出ない」「水漏れしている」「異音がする」「電源が入らない」など、症状を詳しく説明することが大切です。可能であれば、故障の状況を写真や動画で記録しておくことをおすすめします。これらの記録は、のちのトラブル防止に役立つだけでなく、修理業者が適切に対応するための重要な情報となります。このとき、入居者が勝手に修理業者を手配して修理を行なわないように注意が必要です。このような行為は費用負担トラブルの原因となりやすく、場合によっては入居者が修理費用を全額負担しなければならないことがあります。必ずオーナーや管理会社の指示を仰いでから対応するようにしましょう。また、連絡する際は、緊急性の程度も伝えることが大切です。真夏や真冬でエアコンが使えない状況は健康に関わる問題となるため、迅速な対応を求めることができます。ただし、真夏や真冬にはエアコンの修理依頼が相次ぐ時期です。そのため、オーナーや管理会社は迅速に対応したくてもできない場合が多くあります。真夏や真冬にエアコンが使えない状況に陥らないよう、エアコンを多く利用する時期が来る前に試運転しておくことが重要です。備え付けエアコンの効きが悪い場合の対応については、以下の公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会の動画でも説明しているので、ぜひご覧ください。参照:【公益法人が教える】賃貸住宅の備え付けエアコンの効きが悪い! 交換したい時の対応|公益財団法人 日本賃貸住宅管理協会賃貸住宅の備え付けエアコンの修理・交換費用は誰が負担するのか?備え付けエアコンが故障した場合の費用負担について、多くの入居者が疑問に思うポイントでしょう。オーナーや管理会社が負担するケースと入居者が負担するケースに分けて、修理・交換費用について解説します。オーナーや管理会社が負担するケース経年劣化や通常使用による自然故障の場合、修理・交換費用はオーナーや管理会社が負担するのが基本です。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」においても、通常の使用による設備の劣化については、オーナー側の責任として明記されています。参照:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)|国土交通省家庭用エアコンの一般的な耐用年数は10年程度とされており、この期間を超えて使用している場合は、故障時に交換対応となることが多くなります。また、設備として提供されている以上、入居者が快適に部屋を利用できるよう維持する責任がオーナーや管理会社にあります。そのため、正常な使用方法でエアコンを使っていたにも関わらず故障した場合は、基本的にオーナー側の負担となります。一方で、入居者には適切な使用とメンテナンスを行なう義務があります。明らかに手入れを怠ったことが原因で故障した場合は、責任の所在が変わる可能性があるため注意が必要です。居者が負担するケース入居者の故意や重大な過失により備え付けエアコンを壊した場合は、入居者が費用を負担します。例えば、エアコンにものをぶつけて破損させた、水をかけて故障させたなどのケースが該当します。また、オーナーや管理会社に連絡せずに勝手に修理を依頼した場合も、費用は入居者負担となる可能性があります。備え付けエアコンの修理は、所有者であるオーナーや管理会社の許可が必要です。そのため、無断で修理を行なわないようにしましょう。さらに、エアコンの故障を知りながら適切な対応を取らず、故障を悪化させてしまった場合も注意が必要です。例えば、水漏れが発生しているのに放置した結果、建物やほかの設備に損害を与えた場合などは、入居者の責任が問われることになりかねません。先述のように、メンテナンスを怠ったことが明らかな原因となっている場合も、入居者負担となる可能性があります。フィルター掃除をまったく行なわずにエアコンが故障した場合は、適切な使用義務を果たしていないと判断されることがあるでしょう。賃貸住宅の備え付けエアコンの故障リスクを減らす使用方法備え付けエアコンの故障を防ぐためには、日頃の適切な使用とメンテナンスが重要です。正しい使用方法を実践すれば、故障のリスク軽減につながります。フィルターをこまめに掃除する先述のとおり、エアコンのフィルターにホコリがたまると、空気の循環が悪くなり、冷暖房の効率が下がります。そのため、2週間に1回程度の頻度で掃除を行なうことが大切です。フィルターを取り外して掃除機でホコリを吸い取るか、水洗いを行なって掃除しましょう。水洗いを行なった場合は、完全に乾燥させてから元に戻すことが重要です。特に花粉の季節やペットを飼っている家庭では、フィルターが汚れやすくなるため、より頻繁な清掃が必要になります。フィルターが目詰まりした状態でエアコンを使い続けると、消費電気電力の増加だけでなく、エアコン本体の寿命を大幅に短縮することになります。室外機の周りを整理する室外機周辺の環境整備も、エアコンの正常な動作を維持するために欠かせません。室外機の吸込口や吹出口がもので塞がれていると、排熱がうまく行なわれず、エアコンの効きが悪くなってしまいます。そのため、室外機の周囲には、最低でも30cmほどのスペースを確保しましょう。また、室外機周辺に落ち葉やゴミが溜まらないよう、2~3ヵ月に1回程度は周辺を掃除することをおすすめします。室外機の表面についたホコリも、年に数回ほど掃除することで効率的な運転を維持できます。適切な温度設定で運転するエアコンを適切な温度に設定することは、機器への負担を軽減するうえで重要な要素です。極端に低い温度や高い温度にすると、エアコンに大きな負担をかけることになり、故障のリスクが高まります。一般的に推奨される設定温度は、冷房時は26~28度、暖房時は20~22度です。この温度に設定すれば、エアコンへの負担を抑えながら、快適な室内環境を維持できます。冷暖房効率を高めるためには、扇風機やサーキュレーターの併用も効果的です。これらを使用することで、部屋全体の温度を効率良く均一に保つことができ、エアコンの無駄な稼働を抑えられます。結果的に、電気代の節約にもつながります。まとめ賃貸住宅に設置されているエアコンには、「備え付けエアコン」と「残置物のエアコン」の2種類があります。備え付けエアコンの所有権はオーナーや管理会社にあるため、備え付けエアコンが故障した場合でも、入居者が勝手に修理や交換を行なってはいけません。残置物のエアコンについても、所有権が現在の入居者に移っているわけではないため、修理や交換はオーナーや管理会社に確認することをおすすめします。故障が疑われる場合は、故障の状況を写真や動画で記録してからオーナーや管理会社に連絡してください。費用負担について、経年劣化や通常使用での故障はオーナーや管理会社の負担となりますが、入居者の故意・過失による故障の場合や無断修理を行なった場合は入居者負担となる可能性があります。残置物のエアコンについても、修理費用や交換費用をオーナーや管理会社が負担してくれる可能性があるので、契約時に確認しておくことが重要です。日頃から適切な使用とメンテナンスを心がけると、故障のリスクを減らすことが可能です。定期的なフィルター清掃、室外機周辺の清掃、適切な温度設定などの管理を怠らないことが、トラブルを未然に防ぐ最良の方法となります。快適な賃貸住宅での生活を維持するために、正しい知識を持って適切に対応しましょう。v