“ふつうの毎日”って、だれがつくってるんだろう。賃貸住宅管理業界ではたらく3人に、聞いてみました蛇口をひねればお湯が出る。ゴミ置き場はいつも片づいている。エントランスの電球は、切れたままになっていない。そんな「あって当たり前」は、じつは誰かの手で毎日つくられています。それが、賃貸住宅管理の仕事。今回は、現場ではたらく3人に集まってもらいました。【目次】今日話してくれる3人佐藤 健太(さとう けんた)34歳/営業部リーダー新卒入社時は仲介メインの会社方針でしたが、方針転換で「賃貸住宅管理業」へ。その過程で「一度きりの契約で終わる仲介と違い、日々に長く寄り添い暮らしを守れる」という奥深い魅力に気づき12年目。累計100棟以上の物件を担当し、若手4名のチームを率いています。落ち着いた雰囲気ですが、話してみると意外なほどフランク。後輩が失敗しても、まず「で、次どうする?」と一緒に考えてくれる頼れる兄貴分です。鈴木 美咲(すずき みさき)26歳/企画部・入社4年目大学では社会学を専攻し、「人々の当たり前の暮らしを守ることこそが、最も身近な街づくりになる」という視点から賃貸住宅管理業を志望。入社から2年間は入居者対応の現場を経験し、3年目に企画部へ。ハキハキした受け答えと明るい笑顔がトレードマークで、新しいアイデアを提案する若手のホープです。気になった物件はとりあえず現地を見に行くフットワークの軽さが持ち味。田中さんの新人研修でトレーナーを務めた縁で、いまも何かと気にかけている姉御肌です。田中 翔太(たなか しょうた)23歳/営業部・新卒1年目就職活動では「人の役に立っている実感が直接得られること」という軸で企業を探し、当初は漠然と不動産業界を考えていたものの、一過性のお手伝いではなく、入居後の日常を支え、社会貢献に直結する「賃貸住宅管理業」の存在を知り、この世界へ。何事にもまっすぐ取り組む素直さが魅力で、いつもメモ帳を手放さず先輩の言葉を吸収中。元気のいい挨拶で職場の空気をぱっと明るくしてくれる存在です。最近やっと、水まわりのトラブルに一人で対応できるようになり、自分の仕事が誰かの安心につながるやりがいを噛み締めています。「不動産の仕事=お部屋探し」だと思ってた?佐藤:今日は集まってくれてありがとう。あ、翔太くん、もうメモ帳出してる(笑)。まだ何も言ってないよ。田中:すみません、癖で!鈴木:翔太くん、いつもそうなんですよ。研修のときからずっと。佐藤:いいことだよ、それ。じゃあ本題。友達に仕事の話をするとき、二人はなんて説明してる?田中:「不動産って部屋探しの手伝いでしょ?」って、めちゃくちゃ言われます(笑)。だから僕はいつも、「部屋を探すのは仲介。僕らは入居してから退去するまでの、毎日をサポートする仕事だよ」って。佐藤:おお、うまいこと言うね。それ、自分で考えた?田中:鈴木さんの受け売りです。鈴木:ばれた(笑)。仲介が「出会い」をつくる仕事なら、私たちは「その後の生活」を守る仕事、っていう言い方をよくしてます。オーナー様に代わって建物を運営して、大切な資産をお預かりしながら、入居者様には快適な暮らしを届ける。佐藤:うん。相手が二方向いるんだよね、この仕事は。オーナー様と、入居者様と。どっちか片方だけを見ていたら成り立たない。そこが面白いところでもある。田中:あの、ずっと聞きたかったんですけど。「いい物件」って、結局なんなんですかね。設備が新しいとか、駅が近いとか、そういうことじゃない気がしていて。鈴木:あー、それ、私も1年目のころずっと考えてた。佐藤:翔太くん、いい質問するなあ。……たぶんそれ、スペックの話じゃないんだよ。何年住んでも、嫌なところが出てこない。帰ってきて、ほっとする。それが全部なんじゃないかな。鈴木:数字にできないんですよね、そこって。佐藤:できない。でも、確実にある。 いちばん嬉しかったのは、どんな瞬間?田中:この前、インターホンの故障対応に一人で行ったんです。その場で直せて、入居者様に「すぐ来てくれてありがとう」って言われて。……なんか、じわっときました。一日の疲れが全部飛んで。鈴木:あ、それ初めて聞いた。よかったね。田中:帰りの車の中で、ちょっとにやにやしちゃいました。佐藤:わかるよ、その感じ。僕も1年目に同じことがあって。まだ何もできなくて、先輩の後ろを歩いてるだけの時期に、お客様から「あなたが来てくれて助かった」って言われたんだ。何もしてないのに(笑)。でも、あの一言で続けようと思えた。鈴木:佐藤さんにもそういう時期があったんですね。佐藤:あったよ、当然。この仕事、大きな契約とか派手な数字より、そういう一言のほうが記憶に残るんだよね。同業の人と話しても、みんな同じことを言う。いちばん嬉しかった瞬間は?と聞くと、ほとんどの人が「ありがとうと言われたとき」って答えるんだ。鈴木:私が忘れられないのは、先輩の台風対応の話です。台風の前に、飛びそうなものを先回りして片づけておいたら、オーナー様から「被害を予測して動いてくれてありがとう」って。起きたことを直すだけじゃなく、起きる前に防ぐのも私たちの仕事なんだって、そのとき初めてわかりました。佐藤:それ聞いて、美咲さん現場に走ったんだよね。台風の前の日に。鈴木:走りました(笑)。佐藤:僕がいちばん覚えてるのは、ご高齢の入居者様の電球を替えたときかな。たった5分の作業なのに、涙ぐむくらい喜んでくださって。その方にとっては、何日も困っていたことだったんだよね。田中:自分の5分が、誰かの何日分になる。佐藤:お、いいこと言うね。それ、メモしといて。田中:(書きながら)はい!この仕事、街とどうつながってる?鈴木:私がこの仕事を好きなのは、地域に貢献できている実感があるところなんです。建物をきれいに保つことって、その地域の景観や、住んでいる方の安心感にそのままつながっていくんですよね。佐藤:うん。管理が行き届いている建物って、外から見てもわかるんだよ。植栽が整っていて、駐輪場が乱れていない。そういう建物が一棟増えるたびに、その通りの表情が少しずつ変わっていく。田中:担当エリアを歩いていると、自分が関わった建物が目に入るんです。あ、あそこ先月対応したところだ、って。あれ、けっこう嬉しいです。鈴木:わかる。私、休みの日でもつい見ちゃう。……あ、そういえば私、企画部に移ってから、共用部の掲示物の文言を全部書き直したんです。「〜禁止」ばっかりだった張り紙を、「〜していただけると助かります」に。田中:えっ、あれ鈴木さんだったんですか。鈴木:小さいことなんですけどね。毎日目に入るものだから、読んだ人が少しだけ気持ちよくいられたらいいなって。佐藤:ああいうのが効くんだよ、実は。設備を新しくするのももちろん大事なんだけど、暮らし心地って、そういう細かいところの積み重ねでできてるからね。田中:(メモしながら)……深いです。佐藤:職業病だね(笑)。でも、その感覚は大事にしてほしい。この仕事、関わる相手も想像より広くてね。町内会、消防、警察。法定点検で消防の方と連携することもあるし、地域の集まりに顔を出すこともある。鈴木:空き家の問題もそうですよね。放置されて傷んだ建物が増えると、街全体の元気がなくなってしまう。ああいうのって、行政だけでは手が回らない領域なんです。佐藤:そう。「行政では届かないところに、民間の立場で手を入れられる」。これは僕らの仕事の、いちばん誇っていい部分だと思ってる。誰かに褒められるわけじゃないけどね。田中:正直、就活のときは「不動産=営業」というイメージしかなかったんです。入ってみたら、こんなに街に近い仕事だとは思っていませんでした。佐藤:その驚きは、ずっと持っていていいと思うよ。5年後、10年後はどうなっていく?鈴木:この仕事を選ぶか迷っている人が、いちばん気にするのはそこですよね。佐藤:この仕事、毎月の管理料が積み上がっていく形なんだ。景気が良くても悪くても、住んでいる人がいる限り建物の管理は必要になる。だから波が小さい。誰かの暮らしがある限り、なくならない仕事だと思ってる。鈴木:身につくものも幅広いですよね。建物、設備、法律、お金、それから人。私、4年目でもう契約書が怖くないです(笑)。田中:僕も、引っ越すときは誰よりちゃんと選べる自信あります。佐藤:そこは自信持っていいよ。これからはAIやシステムももっと入ってくる。連絡や共有が自動化されれば、僕らは人にしかできないところに集中できるようになる。鈴木:私は、高齢の方も、外国から来た方も、「あそこに相談すれば住まいは何とかなる」と思ってもらえる存在になりたいです。困っている人の、受け皿になれたらいいなって。佐藤:それ、美咲さんが企画部でずっと言ってるやつだ。鈴木:言い続けます(笑)。田中:僕は、この仕事のことをもっと知ってもらいたいです。市役所の窓口の方や、消防の方みたいに、「なくてはならない仕事だよね」って言われる日が来たら嬉しいなって。佐藤:いい締めだね。……この仕事はさ、誰かの「ふつうの毎日」を守る仕事なんだと思う。うまくいっている日ほど、誰にも気づかれない。それでも、止まったら多くの人が困る。街の景色にも、住んでいる人の安心にも、誰かの人生の節目にも、ちゃんと関わってる。鈴木:佐藤さん、今日いちばんいいこと言いましたね。佐藤:いちばんって(笑)。田中:(書きながら)……すみません、いま、メモが3ページ目です。鈴木:翔太くん、それ全部書いてたの?田中:全部書きます。まだ、ひとつも身についてないので。鈴木:大丈夫。私も最初、そうだったから。佐藤:じゃあ、そのメモが要らなくなった頃に、また3人で集まろうか。そのとき翔太くんが、今日と同じことを後輩に話してたらいいな。快適な暮らし心地をつくる。管理会社は、建物の維持管理や入居者対応なども担い、快適な暮らし心地を支えています。管理会社の仕事内容について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。v