賃貸住宅で画鋲を使って壁に穴を開けると、退去時に修繕費が発生するのではないかと不安に思う方は多いのではないでしょうか。実は、国土交通省が定める原状回復のガイドラインでは、画鋲の穴についての扱いが示されています。ただし、このガイドラインには法的拘束力がなく賃貸借契約書の内容が優先されるため、賃貸借契約書の内容も確認することが大事です。本記事では、賃貸住宅における画鋲の穴の扱いや修繕費の目安、穴を開けずにインテリアを楽しむための代替アイテムなどについて解説します。賃貸住宅でも安心して部屋にお気に入りのアイテムを飾りたい方は、ぜひ参考にしてください。【目次】賃貸住宅で画鋲を使うとトラブルになる?賃貸住宅で画鋲を使用した場合、退去時にトラブルになるのかどうかは多くの入居者が気になるポイントでしょう。結論からいえば、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、画鋲程度の小さな穴は「通常損耗」として扱われ、基本的にはオーナー負担とされています。通常損耗とは、普通に生活するなかで自然に発生する損耗のことです。カレンダーやポスターを壁に飾るために画鋲を使うことは、一般的な生活の範囲内と考えられるため、原則として入居者が修繕費を負担する必要はありません。ただし、国土交通省のガイドラインには法的拘束力がないため、必ずしもすべてのケースでガイドライン通りの扱いになるとは限りません。賃貸借契約書に「壁に穴を開ける行為を禁止」などと明記されている場合は、その契約内容が優先されます。そのため、画鋲を使用する前には、ガイドラインだけでなく賃貸借契約書の内容も確認しておくことが重要です。契約書に不明な点があれば、オーナーや管理会社に事前に問い合わせるとよいでしょう。賃貸住宅で画鋲の穴を開けたときにかかる修繕費はいくら?画鋲で開けた穴の修繕費は、穴の大きさや数によって変わります。画鋲の小さな穴であれば、パテや補修剤などを使って簡単に埋められ、修繕費は数百円から数千円程度で済むことが一般的です。しかし、穴が大きく広がっている場合や、何十箇所も画鋲を刺した跡がある場合は部分補修では対応しきれず、壁紙の張り替えが必要になることがあり、その費用は入居者が負担する可能性があります。また、画鋲の穴以外の問題がある場合も注意が必要です。例えば、タバコのヤニによる変色や湿気によるカビ汚れなど、入居者の過失による損傷については入居者負担となります。壁紙の張り替えにかかる費用は、1平方メートル当たり数百円から数千円程度が一般的です。壁紙のカビやシミなどの修繕費も、一般的には数千円かかるとされています。ただし、これらは一般的な費用相場です。実際の費用は、賃貸住宅や損傷の程度によって異なる点に留意しましょう。【穴を開けない】賃貸住宅で画鋲の代わりになるアイテムここからは、壁に穴を開けずにインテリアを楽しめるアイテムをご紹介します。用途や耐荷重に合わせて適切なアイテムを選べば、退去時の心配をすることなく、インテリアを楽しめるでしょう。ピクチャーレールピクチャーレールが付いている賃貸住宅なら、それを活用するのも一つの方法です。ピクチャーレールが付いていれば、ハンガータイプのカレンダーをそのままかけたり、ポスターを市販のフレームに入れてワイヤーで吊るしたりできます。つっぱり式のスタンドや棒つっぱりスタンドやつっぱり棒を壁に設置し、フックなどを使ってカレンダーをかける方法もあります。ただし、つっぱり棒に大きな負荷をかけ続けると、壁に跡や傷が残ることがあるので注意が必要です。つっぱり式のアイテムは、カレンダーやポスターといった軽めのアイテムをかける際に使用しましょう。壁に傷が付かないか不安な場合は、衝撃吸収パッドの使用をおすすめします。粘着テープ市販されている粘着テープのなかには、壁紙にフックやポスターなどを設置する際に使用できる商品があります。キッチンや浴室で使えるものなど種類が豊富で、用途に合わせて選ぶことが可能です。ただし、はがす際には注意が必要なため、後述する注意点も併せてご確認ください。ソフト粘着剤ソフト粘着剤とは、形を自由に変えられ、簡単に貼ってはがせる粘着剤のことです。粘土のような素材で、ポスターやポストカードなどの軽いものを飾る際に便利なアイテムです。形だけでなく大きさも自由に変えられるほか、繰り返し利用できるので気軽に使えるでしょう。マスキングテープマスキングテープは粘着力があまり強くなく、壁に跡を残さず飾り付けできるアイテムです。ポストカードや写真といった軽いアイテムを、壁に飾ることができます。デザイン性の高いマスキングテープであれば、インテリアのアクセントにもなるでしょう。手軽に入手でき、価格も手頃なため、気軽に試せるのも魅力です。賃貸住宅で画鋲を使わずに物を飾る方法壁に穴を開けないように工夫すれば、退去時の修繕費の負担を避けることができます。ここでは、賃貸ならではの制約を考慮しながら、インテリアを楽しむ方法をご紹介します。粘着式のフックを使う粘着テープが裏面に付いているタイプのフックを使えば、軽量の雑貨を壁にかけることができます。さまざまな種類があり、販売店も100円ショップからホームセンターまで豊富で選びやすいのが特徴です。基本的に耐荷重が表示されているため、かけるものの重さに応じて適切なフックを選べます。ただし、はがす際には壁紙を傷めないように注意が必要です。つっぱり棒やラックを活用するつっぱり式の棒やラックを活用すれば、壁にフックや粘着テープなどを取り付けることなく、アイテムを飾れます。アイテムを収納しつつ、仕切りとして使うことも可能です。カーテンや布をかければ、インテリアの幅が広がるでしょう。家具や棚の上を利用する家具や棚の上を利用すれば、壁を使わずに写真や小物、観葉植物などを飾ることが可能です。家具や棚の上に置くため、重さがあるものでも安定しやすく、安心して飾れるでしょう。本棚やチェストの上にお気に入りの写真や小物を並べるだけで、おしゃれな空間を演出できます。壁に穴を開ける必要がないため、退去時の修繕費を心配する必要もありません。画鋲代わりのアイテムでも注意したい3つのポイント画鋲の代わりとしてご紹介したアイテムでも、いくつか注意すべきポイントがあります。トラブルを避けるために、以下の点に気を付けましょう。粘着跡や色あせが残るケースがある粘着式のテープやフックをはがした際に、壁紙の一部が一緒にはがれてしまったり、粘着跡が残ったりすることがあります。また、粘着テープなどを長期間貼っていると、その部分だけ日焼けせず壁紙の色に違いが出ることもあるでしょう。慎重にはがすのはもちろんのこと、定期的に張り替える、シールはがしスプレーを使用するといったことも対策として有効です。あまりに粘着力が強すぎるものは避けましょう。重いものをかけると落下の危険性がある粘着式のテープやフックを使う場合、壁に飾るアイテムの重さが耐荷重を超えていると落下するおそれがあります。その結果、床を傷付けるリスクがあるため、重いものを飾りたい場合は特に注意が必要です。粘着式のテープやフックを使う際には念のため、落下しても問題ないようにカーペットを敷いておくと安心です。また、必ず製品に記載されている耐荷重を確認し、その範囲内で使用するようにしましょう。ドアや襖は交換費用が高くなる場合もあるドアや襖に粘着式テープなどを使用して傷付けると、ドアや襖の枠ごと交換になる場合があります。交換費用はドアや襖のグレードによって変動しますが、数万円単位の費用がかかることになりかねません。ドアや襖には画鋲の代替品も含めて使用を控え、別の飾り方を検討することをおすすめします。まとめ国土交通省のガイドラインによると、賃貸住宅の壁に付けた画鋲の穴は、原則としてオーナー負担とされています。しかし、賃貸借契約書の内容や使い方によっては、入居者が修繕費を負担するケースもあるため注意が必要です。壁にポスターや小物などを飾りたい場合は、本記事でご紹介した代替アイテムや方法を採用し、壁に穴を開けずに済むよう工夫すれば、退去時のトラブルを避けやすくなります。ピクチャーレール、つっぱり棒、粘着テープ、ソフト粘着剤、マスキングテープなどさまざまな選択肢があるため、用途に応じて使い分けてみてください。ただし、代替アイテムにも粘着跡が残る、重いものだと落下のリスクがある、ドアや襖の交換が発生する可能性がある、といった点には注意が必要です。賃貸住宅でインテリアを楽しむためには、壁や床などを傷付けないように工夫する必要があります。あくまで自己責任になるため、原状回復の範囲などに不安がある場合は、事前にオーナーや管理会社へ確認しておくと安心です。適切な方法を選んで、賃貸住宅でもインテリアを楽しみましょう。v